パーティーゲームの結果画面には、たいてい順位が出ます。1 位から最下位まで並べて、点数を添えて、シェアボタンを置く——僕も最初はそう作りました。そして、「0 点で終わった人の行に何と書くか」でずっと迷い、最終的に順位表そのものを主役から降ろすことになりました。
この遊びの結果画面は、ひとりで見るものではありません。その場の全員が同じ画面を覗き込み、たいてい誰かが声に出して読み上げる。だから称号は、ゲームデザインというより司会の台本に近い立ち位置にあり、判定はこの 1 行に決まりました——その語を読み上げたとき、参加者が部屋の中の誰かを見るか。
mawashite.com は、スマホ 1 台を回して 3〜8 人で遊ぶパーティーゲームのサイトで、僕が 1 人で作っています。2026-08-09 時点でゲームは 13 本あり、どのゲームも最後に称号が出ます——「知ったか王」「はぐれ探偵」「いきのこり王」。順位の数字より称号のほうが記憶に残るからで、この称号は全ゲームで全員に配ると決めています。ゲームやアプリの結果画面・通知・ランキングに、参加者を評する短い文言を出している人向けの記事です。
最初の失敗: 最下位だけに貼るラベル
1 本目の 知ったかリレー (全員が嘘の解説をでっち上げるゲーム) の初期の設計には、「🐣 正直者」という称号がありました。単独最下位に付くラベルで、「嘘が下手 = 正直者」という反転ジョークのつもりでした。この後に出てくる「知ったか王」「説得力あり」「ピュアすぎた」も、同じゲームの称号です。
これを止めたのは、レビュー役の教師ペルソナです。AI に立場の違うレビュー役を演じさせる仕組み (ペルソナレビュー) の教師役で、当時はこの役も置いていました (いまは学校シーンの評価も生徒役のペルソナに任せています)。記録に残っている指摘がこれです。
条件が絞られているように見えて実際は絞れていない。4 人 3 ラウンドで「誰か 2 点・対象 0 点」は最も起きやすい形。そして単独最下位になるのは嘘が下手な子ではなく話すのが苦手な子。狙いと逆に、いちばん配慮が必要な生徒に最も高い確率で貼り付く。しかもその順位表にはシェアボタンと QR (観ていた人が自分のスマホでゲームを開くためのもの) が並んでいる。
反論できませんでした。選択肢は 3 つ——消す・設定でオフにできるようにする・全員に配る。採用したのは 3 つ目です。最上位に「知ったか王」、票が入った人に「説得力あり」、0 票の人に「ピュアすぎた」。全員が何かしらの称号を持って終わるので、誰も名指しされません。0 票が 2 人いれば 2 人とも同じ「ピュアすぎた」になるので、その中でも差はつきません。
数字ひとつで、作り直しが台無しになる
称号を配り直したあと、3 人のレビュー役のペルソナが独立に同じ指摘を出しました。称号の隣の「◯点」が、再設計を無効化しているというものです。
「ピュアすぎた 0点」。これでは「あなたをピュアと呼びましたが、点は 0 でした」と読める。ラベルを優しくしても、数字がそれを引き戻します。対処は行ごとの得点表示を全部消すことでした。結果画面の主役はその日に出たお題のギャラリーになり、順位表は下の小さな一角に降格しました。
得点表示を捨てるのは、普通なら安くない判断です。「次はもっと」を作るのは、称号より数字のほうが得意だから。それでも消せたのは、このゲームでシェアされる資産が順位ではなくお題そのものだったからです。当時のレビューで、レビュー役のペルソナのひとりがこう言っています。
グループ LINE に「ぶっちぎりの知ったか王 プレイヤー1 / 9点」を投げても、受け取った側は何も面白くない。でも「『逆さスイカ祭り』について知ってる風に語れ」だけ送られてきたら、私は絶対「何それ笑」って返す。
残すべき数字がそもそも無かったわけです。得点が競争の中心にあるゲームなら、この手は使えません。
判定基準を 1 行にする
この一件のあと、同じ穴が別の形で何度も出ました。役職名、属性語、身体的特徴——そして 4 回目が結果画面の称号。デッキ (お題データ) のレビュー基準は既にあったのに、コードが組み立てる文言はその射程の外にあったのが原因です。そこで審査の観点に、導入で述べた 1 行の判定基準を足しました。
その語を読み上げたとき、参加者が部屋の中の誰かを見るか。
そして、とくに厳しく見る 2 つを添えました。(a) ゲーム終了後まで画面に残る文言——ラウンド中の一時的な名指しは会話の起点として働くけれど、締めくくりとして全員が見る画面に残るラベルは総括として刺さる。(b) 同じ人に繰り返しつきうる文言——1 回なら笑いになるものが、3 回目には属性になる。(b) がいちばん怖いのは画面の外での話で、教室で何度も遊ばれるうちに称号がそのままあだ名になる経路があります。画面は閉じれば消えますが、あだ名は残る。
この観点が生まれた直接のきっかけは、せーのドン (4 択に自分の答えとみんなの最多予想を入れて一斉開票するゲーム) の「ひとりだけの人」という称号でした。4 択で自分だけ違う答えを選んだ回数が最多の人に付くもので、開票のたびに場を沸かせているのは確かにこの人です。
それでも教師ペルソナの判定は blocker でした。理由は、開票中の一時的な名指しは会話のきっかけとして働くが、終了後に全員が見る画面へ「あなたは一人だけだった人」という総括が居残るのは別の話だ、というもの。人と違うことを気にしている子には、この総括が気まずさとして残ります。
修正は称号名の変更ひとつですが、変えたのは対象です——称えるのは人の孤立ではなく、答えの珍しさ。いまその称号は「レア回答の人」です。ちなみにこの珍回答は得点になりません。せーのドンの得点設計は、多数派に合わせると得になる圧をかけると正直な珍回答が消えて開票後の会話が死ぬ、という理由で「合わせる圧をかけない」を原則にしていて、称号もそれと一貫させています。
// せーのドンの称号 (抜粋)。称える対象は「人の孤立」ではなく「答えの珍しさ」。
// 得点には反映しない — 「合わせる圧をかけない」という得点設計と一貫させるため
const honors = players.map((_, i) => {
if (points[i] === top) return '読みの達人';
// 1 回だけの偶然には付けない (2 回以上で「珍しい答えを選ぶ人」になる)
if (maxLone >= 2 && (loneCounts[i] ?? 0) === maxLone) return 'レア回答の人';
// 得点ではなく的中回数で判定する。全員一致ボーナスだけで点が入った人に
// 「いい線いってた」を出すと、示していない読みの腕を称えることになる
if ((hitCounts[i] ?? 0) > 0) return 'いい線いってた';
return '次は読める';
});
条件が maxLone >= 2 なのも意図的で、たまたま 1 回だけ少数派になった人には付けません。1 回は偶然、2 回以上なら「珍しい答えを選ぶ人」——称号は繰り返しで属性になるという前述の (b) を、そのまま条件式にしています。
同じ判定を通した文言たち
観点が言語化されてからは、称号以外の画面文言も同じ基準で見るようになりました。
協力ゲームの 0 点帯ラベル。めもりあわせ (目盛りの位置を当てる協力ゲーム) は、開票時に各自のズレを言葉で出します。最初の実装は 0 点帯に「とおい…」と表示していました——これは名前とセットで繰り返されると「当てるのが苦手な子」を晒す構造で、最下位ラベルと同じ形です。
いまは評価語をやめて「大ぼうけん」。遠くを狙った冒険として扱います。ただし面白さが減っていないかは検証していません。「とおい…」の自虐的な可笑しさが好きな卓もあるはずで、言えるのは「協力ゲームなので個人のズレを笑う必要が薄い」という理屈だけです。
かぶりけし (ヒントがかぶると消えるゲーム) の「おそろい王」も同じ基準を通しました。かぶりは一見「失敗」ですが、このゲームでいちばん笑いが起きるのは、かぶりが判明した瞬間の種明かしです。笑いは開票の瞬間に既に起きているので、称号がそれを担う必要はない——だからかぶり最多の人を「おそろい王」として称える枠を作りました。失敗として数えると、いちばん盛り上げた人が下に見えてしまいます。
ひとつ注記を。この基準で全部を説明できるわけではありません。たとえばけたちがい (数字クイズにこっそり答えて、いちばん近い人をみんなで当てにいくゲーム) では賭博の語彙 (ベット・賭ける・大穴) を語彙ごと外していますが、これは「誰かを名指すか」ではなく未成年が遊ぶ前提の健全性という別の基準による判断です。1 行の基準が効くのは「人に貼りつく文言」の範囲までで、そこは分けて考えています。
解けていない部分
正直に書いておくと、この設計には残った穴があります。レビューで指摘されたとおりです——称号の種類が違う以上、0 票だった「グループ」は依然として見分けられる。「ピュアすぎた」が 2 人並べば、その 2 人が何だったかは全員に分かります。
これは全員に称号を配るという方式に内在するもので、完全に消すには全員を同じ称号にするしかなく、それは称号がないのと同じです。できたのは、得点の数字を消し、順位表をお題ギャラリーの下の小さな一角に降格させて、見出しではなく細部にすることまで。
同じ「ピュアすぎた」でも、1 人で見る画面なら軽口ですが、全員の前で読み上げられると総括になります。1 人用のゲームなら 0 点は自分だけが知っている情報で済みますが、この形式では済みません。導入で書いた判定基準が効くのも、結果画面が部屋に向かって読み上げられるからです。
ここから先の代案はまだ試していません。同じ帯の称号に複数の言い回しを用意する、行の並び順を成績と無関係にする——手はあるのに、検討したのは「称号をどう名づけるか」の側だけで、次にやるとしたら結果画面のレイアウトの側から手を入れることになります。解決したとは言えないので、解決したとは書きません。実物は mawashite.com の結果画面で見られます。