「オンラインでも遊べますか」と聞かれることがあります。僕はスマホ 1 台を手で回して遊ぶ mawashite.com というパーティーゲームのサイトを作っていて、いまゲームが 13 本あります。

正直に書くと、不向きです。13 本のうち、通話でそのまま遊べるのは 1 本だけ。6 本は進め方を変えれば成立して、残り 6 本は割に合わないか、そもそも成立しません。どれがどれで、なぜそうなるのかを、実装から順に書きます。

なぜ噛み合わないのか

ここのゲームはほぼ全部、1 台のスマホを手で渡しながら進みます。そしてこの手渡しは、単なる物理的な受け渡しではなく秘密を配る仕組みそのものです。はぐれワードのワード配りは、受け取った本人が長押ししている間だけ自分の 1 語が出ます。えでんごんの幕間にいたっては、コードのコメントに「この画面だけは何も見せないのが仕事」と書いてあるほどで、1 つ漏れたら鎖がその場で終わります。

通話には手がありません。そして画面共有は全員に同じものを見せる仕組みなので、長押しで 1 人にだけ見せる、が成立しません。

もうひとつ。ゲームの状態を同期するサーバーがありません。進行は開いているタブの中だけに保存されていて、外には出ません。だから全員が同じ URL を開いても、別々のゲームがその人数ぶん立ち上がるだけです。「各自の端末で開いて一緒に遊ぶ」形は、最初から存在しません。

何が秘密なのか、で 3 つに分かれる

判定の基準を先に書きます。画面共有で壊れるのは秘密だけなので、13 本を「何を隠しているか」で分けます。

  • 秘密がない: 誰にも隠すものがない。共有した画面をそのまま全員が見ていい
  • 秘密の入力: お題は全員に公開で、隠すのは自分が入れた答えだけ
  • 秘密の閲覧: 誰か 1 人が、ほかの人に見せてはいけないものを見る
種類ゲーム
秘密がない (1 本)だれだっけ
秘密の入力 (6 本)知ったかリレー / 知ったかグルメ / くるしいわけ / けたちがい / せーのドン / うそじてん
秘密の閲覧 (6 本)かぶりけし / めもりあわせ / さんしゅうめ / えでんごん / きもちバレ / はぐれワード

1 + 6 + 6 で 13 本です。上から下へ、通話での成立度がそのまま落ちていきます。

そのまま遊べる 1 本: だれだっけ

だれだっけ だけは、端末が答えを 1 文字も持っていません。質問が出て、全員が順番に声で答える。入力はしません。しばらくしてから「けん さんは何て答えたっけ?」と聞かれ、みんなで思い出し、本人が正解を発表し、思い出せた人を進行役がタップする——それだけです。実装のコメントも「端末は答えの中身を持たないので、正解の判定は本人の発表に委ねる」と書いています。

隠すものがないので、画面共有はむしろ好都合です。しかも持ち時間の設定がないので、通話の遅延で誰かが 2 秒遅れても何も壊れません。

ただし 1 か所だけ、そのままにできない場面があります。思い出すときの合図が「せーの!」で全員が同時に言う形なんです。早い人の答えに引きずられないための仕組みですが、通話で全員が一斉に喋ると、いちばん聞き取れないやつになります。

ここはチャットに置き換えてください。ただし一手間いります。チャットは声より同時ではありません。送信に順番が付くので、遅れた人は先に流れてきた他人の答えを読んでから送れてしまう。引きずられないための「せーの」なのに、それでは元も子もない。

打ち終わった人が先に合図を出し、全員そろってから一斉に送る。 ここまでやれば機能しますし、答えのずれが文字で並ぶぶん、この遊びはむしろ読みやすくなります。

だれだっけ紹介ページへ →あの人、なんて答えたっけ?3〜8人6人で約10分スマホ1台

6 本は「進行役への DM」で成立する

秘密が入力だけのゲームは、お題も、話す場面も、全部共有画面に出していい。困るのは入力の瞬間だけです。ここは 1 つのやり方で片付きます——各自が自分の答えを進行役に個別メッセージで送り、進行役が代わりに入れる

進行役は画面を共有している人が兼ねます (自分の答えは自分で入れるので、送るのは残りの人だけ)。回収も進行役の仕事です。誰がまだ送っていないかは、どこにも表示されません (端末は 1 台きりで、残りの人数は進行役の頭の中にしかない)。1 人の遅れがそのまま全員の無言になるので、送ったら合図するを先に決めておいてください。ついでに送り先を間違えたラウンドは飛ばすも決めておくと揉めません。

これで進行はまわります。ただし進行役だけがコストを払う形になり、しかもその大きさが 2 段階に分かれます。

先に、打ち込む回数を数えておきます。6 人・既定の設定でいくと、知ったかリレー・知ったかグルメ・くるしいわけが 18 回 (3 ラウンド × 6 人の投票)、けたちがいとせーのドンが 24 回 (4 ラウンド × 6 人)、うそじてんが 36 回 (ことば 3 つ × 「全員が書く + 全員が投票」)。人数にそのまま比例するので、8 人ならうそじてんは 48 回です。ここまで来ると遊びというより入力作業なので、通話では人数を絞ってください

減らせます。知ったかリレーとくるしいわけはラウンドを 1 まで、うそじてんはことばを 2 つまで、始める前の画面で下げられます (36 回が 24 回に)。ただしけたちがいとせーのドンはラウンド固定なので、24 回は削れません。

軽いほう (4 本)。 知ったかリレー・知ったかグルメ・くるしいわけで秘密なのは投票だけです。この 3 本は得票がそのまま得点なので、他人の票を先に知っても進行役の点は 1 点も動きません。失うのは「誰が誰に入れたか分からない」という気楽さだけです (開票画面に出るのも票数だけで、誰の票かは最後まで出ません)。けたちがい は少しだけ違います。最近接への +2 は持ち主を知っても当たりませんが、このゲームには匿名の行に印をつける +1 があります。リストを伏せ名にしているのは「数字ではなく人を当てにいく (詳しそうな人の行に全員が乗る)」のを防ぐためなので、ここは得点にも効きます。

重いほう (2 本)。 うそじてんとせーのドンは、入力を代行した時点で進行役がそのゲームを降りることになります。うそじてんは全員の嘘を打ち込む役なので、残った 1 行が本物の意味だと消去法で分かります。本物を当てると点が入るルールなので、進行役には毎回タダで点が入る。せーのドンも同じで、全員の選択を知っていれば「みんなの最多はどれか」の予想は確実に当たります。

この 2 本を通話でやるなら、進行役は最初から出題者として降りると決めたほうが健全です。どちらも 3 人から遊べるので、進行役を抜いて 3 人残れば成立はします。

ただしうそじてんだけは、そのうえで人数を欲張らないでください。このゲームの入力だけは 30 字までの自由文で、ほかのようなタップではありません。6 人なら 36 回ぶんの文章を、進行役が読んで打ち直すことになります。

6 本は諦めてください

かぶりけし・めもりあわせ・さんしゅうめ・えでんごん・きもちバレ・はぐれワードは、誰か 1 人だけが見る画面が進行の中心にあります。共有すれば全員に見えるし、共有しなければ誰にも見えない。画面共有には中間がありません。

えでんごんは、ここで完全に終わります。このゲームの絵は指で画面に描くもので、描いた線がそのまま次の人へ渡っていく鎖です。遠くにいる人は、進行役の端末に描けません。通話でやる方法がありません。

残る 5 本は、進行役が最初からゲームを降りて配達人に徹すれば、形にはなります。秘密を 1 人ずつ個別メッセージで送り、返ってきたものを打ち込む。全部を知っている人が卓にいても、その人が点を争っていないなら欠陥ではない——ここは認めます。構造の問題ではなく、量の問題です。

その量が現実的でないというだけです。はぐれワードを 6 人・既定の 3 ラウンドでやると、ワード配りが 6 通、投票が 6 通、それが 3 回で 36 通。しかも配るワードを 1 通でも取り違えたら、その時点でゲームが壊れます。見合わないので、やめておくのが正解です。

画面を共有するときの実務

そのうえで遊ぶと決めた人へ、4 つだけ。

進行役はパソコンで開いてください。 ここがいちばん大事です。スマホの画面共有は画面まるごとが流れるので、個別メッセージを開いた瞬間、その中身が全員に映ります。代打ちという前提そのものが崩れる。パソコンで、ゲームのウィンドウ (かタブ) だけを共有する形にしておけば、メッセージを読むために切り替えてもゲーム画面が映り続けます。読みやすさのためではなく、漏らさないためです。遊ぶ画面は幅 448px で止まる作りなので、ウィンドウは縦長にしておくと収まりがいい。

設定でつまずきそうなら、共有しない手もあります。 スマホでゲームを開いて、その画面をパソコンのカメラに映す。文字は小さくなりますが、共有も音声も設定に触らずに済みます。慣れていない卓ならこちらが早い。

音が乗るかは、始める前に 1 回試してください。 語りの残り時間は音で刻まれ、結果画面ではファンファーレが鳴ります (知ったかリレーの開票には、最終ラウンド以外でドラムロールも入ります)。音を含められるかは、アプリと共有方式の組み合わせで変わります。「音を流せる方式」と「ゲーム画面だけが映る方式」を両立できないなら、迷わず後者を取ってください。音は演出ですが、漏れたらゲームそのものが終わります。実況は声で足ります。

持ち時間は進行役の端末で進みます。 語りや描画に持ち時間のあるゲームでは、共有の遅延ぶんだけ、受け手の画面に出ている残り時間が実際より長く見えます。しかも話している本人も受け手です。自分の画面にまだ数秒あるのに時間切れになるので、これは不利というより理不尽に感じる種類のズレです。通話でやるなら持ち時間は 1 段長めに

まとめ: 通話なら、通話用のものを

そのまま遊べるのは だれだっけ 1 本で、「せーの」だけチャットに置き換えます。進行役が入力を代行するなら、知ったかリレー・知ったかグルメ・くるしいわけ・けたちがいの 4 本が普通に遊べて、うそじてんとせーのドンは進行役が降りる前提でさらに 2 本。合計 7 本が、条件つきで手の届く範囲です。残る 6 本のうち、えでんごんは絵を端末に描くので成立せず、ほかの 5 本は配達に徹すれば形にはなるものの量が見合いません。

ひとつ付け加えると、通話ならわざわざこれを選ばなくてもいいとも思っています。このサイトは「全員が集まっているのに道具が何もない」ときのために作ってあります。通話をしている時点で、参加者は全員が自分の端末を持っていて、回線も繋がっている。その条件が揃っているなら、最初からオンライン用に作られたゲームのほうが素直に面白い。

それでも今夜これで遊ぶなら、だれだっけ からどうぞ。あれは通話でも普通に面白いので、妥協ではありません。